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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)2号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山崎保一、同中川久義の上告理由について。

登記は物権の対抗力発生の要件であつて、この対抗力は法律上消滅事由の発生しないかぎり消滅するものではないと解すべきである。したがつて抵当権設定登記が抵当権者不知の間に不法に抹消された場合には、抵当権者は対抗力を喪失するものでないから、登記上利害の関係ある第三者に対しても回復登記手続につき承諾を与うべき旨を請求することができるものといわなければならない。所論は登記上利害関係ある第三者は回復登記によつて不測の損害を受けるか否かにより承諾義務の有無を決すべきである旨主張するが、抹消登記が不法に行われたものである以上、その回復登記の有無にかからず第三者は抵当権登記の対抗力を否認することができない立場にあり、回復登記がなされることによつて何等実体上の損失を被むることにはならないから、実体関係に符合させるための回復登記手続に対する承諾を拒み得ないものと解するを相当とする。引用の判例は本件に適切でなく、原判決は結局正当に帰し、所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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